はじめに
Tensor Flowを理解するために計量テンソルの物理的な意味の理解が不可欠なので数式を追ってみた。ちょっと時間かかったけど、計量テンソルまではOK。スカラー、ベクトルを説明するまではまだ理解できてない。しかし、Ad-HocなIT技術ばかり触っていると、数式の美しさは格が違うな。
- 計量テンソルが直感的に何を表しているのかは最後だけでOK
- 変換係数αik=gijって何?を理解するために共変ベクトル、反変ベクトルの定義を遡る必要がある
ベクトルと変換
ある座標系の基底ベクトル(e1,e2,e3)を、別の座標系のベクトル(e1‘,e2‘,e3‘)に変換することを考える。適当な係数αijを使って線形結合で表現すると、
- e1‘=α11e1+α12e2+α13e3
- e2‘=α21e1+α22e2+α23e3
- e3‘=α31e1+α32e2+α33e3
αikを変換係数と呼ぶ。変換係数により基底ベクトルeから別の規定ベクトルe’への座標変換を決定している。
まとめると以下のように表現できる。(HTMLじゃ厳しいです…)
- ei‘=Σk=13αiikek
ダッシュ付きベクトルとダッシュ無しベクトルを入れ替えると
- ek=Σl’=13αkl’el‘
上の式に下の式を代入する。これはダッシュ無しベクトルをダッシュ付きベクトルに変換する式に、ダッシュ付ベクトルをダッシュ無しベクトルに変換する式を代入することを表す。もっと言えば、変換と逆変換を同時に行ってみる。
- ei‘=Σk=13Σl=13αi’kαkl’el‘
この右辺はeiiにならないといけないので、
- Σk=l3αi’kαkl’=0 (i’≠l’)
- Σk=l3αi’kαkl’=1 (i’=l’)
ダッシュ付きベクトルとダッシュ無しベクトルを入れ替えても同様に、
- Σk’=13αk’lαk’l=0 (i≠l)
- Σk’=13αk’lαk’l=1 (i=l)
見事な感じで、Σk=13Σl=13αi’kαkl’は単位行列ということになる。話を戻すと変換、逆変換を同時におこなうと元に戻る、ということになる。
なお、クロネッカーのデルタを使うと、
- Σk=l3αi’kαkl’=0 (i’≠l’)
- Σk=l3αi’kαkl’=1 (i’=l’)
は、以下のように1つにまとめられる。
- αi’kαkl’=δi’l’
同様に、
- Σk’=13αk’lαk’l=0 (i≠l)
- Σk’=13αk’lαk’l=1 (i=l)
は、以下のように1つにまとめられる。
- αk’lαk’l=δk’l
共変ベクトルと反変ベクトル
ある基底ベクトルe=(e1,e2,e3)を別の基底ベクトルe’=(e1‘,e2‘,e3‘)ベクトルに変換する際の座標変換は以下のように表される。
- ei‘=αi’kek
この時、変換係数αi’kを用いて、基底ベクトルの変換式と同一の変換式に従うベクトルA=A1e1+A22+A33を共変ベクトルと呼ぶ。
一方、添字を上下逆にした変換係数αki’ckに従うベクトルC=C1e1+C2e2+C3e3を反変ベクトルという。
- C’i=αki’Ck
ここで、eiを共変基底、eiを反変基底とよぶ。
共変基底、反変基底には次式が成り立つ。
- ei・ej=δij
計量テンソル
共変基底ek,ekを用いたベクトルA=Akek=Akek。
それぞれに添字を上下反転させた基底ei,eiとの内積を取る。
- ei・A=Akek・ei=Ak(ei・ek)
- ei・A=Akek・ei=Ak(ei・ek)
共変基底、反変基底の積 ei・ek=gikとする。
- ei・A=Akgik
- ei・A=Akgik
A=Aiei=Aieiであるから、
- ei・Aiei=Akgik
- ei・Aiei=Akgik
整理すると、
- ei・ei Ai=Ai=gikAk
- ei・ei Ai=Ai=gikAk
つまり以下。
- Ai‘=gikAk
- Ai‘=gikAk
これは、ベクトルの共変成分、反変成分の変換式である。
共変成分、反変成分を相互変換する変換係数gij(=αij)の意味
ベクトルrの長さが微小に変化したとする。その微小変化をベクトルdr=dxiei=dxieiとする。
ds2
=dr・dr
=dxiei・dxjej=gijdxidxj
=dxiei・dxjej=gijdxidxj
=dxiei・dxjej=gujdxidxj
=dxidxi
ei-ejを座標系として取ったとき、dxi、dxjを成分とすることを表す。
また、ei-ejを座標系として取ったとき、dxi、dxjを成分とすることを表す。
これらの座標系で各座標軸に沿った変化分の単純な積dxidxj、dxidxjと、本当の変化分の2乗ds2の比がgij、gijであることを表す。
gij、gijを計量テンソルと呼ぶ。