球面集中現象理解のための数学シリーズ第2弾。
前の記事でデカルト座標->極座標の変換から体積要素の積分により3次元球体の体積を導出してみました。
極座標の3変数\(r,\phi_1,\phi_2\)について定積分を計算していくと\(\frac{4\pi r^3}{3}\)が出てきます!
より高次元の超球体の体積がわかると、超高次元のときに体積が超球体の表面に集中する様が
論理の飛躍なく理解できるらしいので、今回は高次元の超球体の体積を導出するやつを流してみます。
\(n\)次元空間において以下を満たす点の集合が半径\(r\)の\(n\)次元球体です。
\(x,y,z…\)とやっていくとアルファベットが尽きるので\(x_1,x_2,\cdots,x_n\)とします。
(3次元だとすると、半径が\(\sqrt{x_1^2+x_2^2+x_3^2}\le r\)の全ての点。)
\begin{eqnarray}
x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2 \le r^2
\end{eqnarray}
この集合を全部足したものが体積になります。
例えば3次元のとき、前回の記事の通り以下のようになります。ここではデカルト座標\(x,y,z\)。
極座標変換することで計算ができます。
\begin{eqnarray}
\int_{x^2+y^2+z^2 \lt r^2} U(x,y,z) dV &=& \int_{0}^{2\pi} \Biggl( \int_{0}^{\pi} \Bigl( \int_{0}^{r} U(r,\phi_1,\phi_2)r^2 sin(\phi_1) dr \Bigr) d \phi_1 \Biggr) d\phi_2 \\
&=& \frac{4}{3} \pi r^3
\end{eqnarray}
ちなみに2次元球体の体積(つまり円の面積)は当たり前ですが\(\pi r^2\)です。
1次元球体の体積(つまり直線の長さ)は\(r\)です。
なんとなく\(n\)次元だと\(r\)の次数が\(n\)になりそうですが、
実際そうで(時間がないので公式として使ってしまいます)、
\(n\)次元の超球体の体積は\(r^n\)に比例します。
\(Vr^n\)のようにしておきます。
\(n\)次元の超球体を輪切りにすることを考えます。
球をどうやって輪切りにしても断面図は真円ですので…。
3次元の球体を輪切りにすると2次元の平面が現れる、というイメージです。
\(n\)次元の超球面を輪切りにし\(n-1\)次元の平面を作成し、
\(n-1\)次の平面と微小距離\(\Delta r\)をかけて\(n\)次元の直方体を作ります。
微小距離\(\Delta r\)を限りなくゼロに近づけることで体積要素とします。
体積要素は詰まるところ輪切りですが、輪切りなのに\(n\)次元なのです。
体積要素を全範囲で積分することで体積を求めます。
さて、\(x_1^2 + x_2^2 + \cdots + x_n^2 = 1\)が半径1の単位球です。
これを輪切りにします。\(n\)次の変数を定数にします。\(x_n=t\)。
つまり、輪切りは\(x_1^2 + x_2^2 + \cdot + x_{n-1}^2 = 1-t\)。
輪切りの半径は\(\sqrt{1-t}\)。\(t=0\)であれば丁度球体を真っ二つにする感じです。
\(t=1\)であれば球体のキワの限界で面積がゼロ。
\(t\)で輪切りにしたあと、\(t\)を微小距離\(t+\Delta t\)だけ増やします。
その体積は\(V_{n-1}(\sqrt{(1-t)^{n-1}}) \Delta t\)。
\(\Delta t\)を限りなくゼロに近づけると真の輪切りに近づき、
それを\(r\)の全範囲で定積分します。
\begin{eqnarray}
V_n=\int_{-1}^{1} V_{n-1}\sqrt{(1-t)^{n-1}} dt
\end{eqnarray}
球体は真ん中で対照なので、
\begin{eqnarray}
V_n =2 \int_{0}^{1} V_{n-1}\sqrt{(1-t)^{n-1}} dt
\end{eqnarray}
計算してから積分するのと、積分してから計算するのが同じなので、
\begin{eqnarray}
V_n=2 V_{n-1} \int_{0}^{1} \sqrt{(1-t)^{n-1}} dt
\end{eqnarray}
超絶懐かしい置換積分を使うと\(\int f(x) dx = \int f(g(t)) \frac{dx}{dt} dt\)が出来る。
\(t=sin\theta\)とすると、
\begin{eqnarray}
V_n= 2 V_{n-1}(\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} cos^{n-1}\theta cos \theta d \theta )
\end{eqnarray}
これどうやって積分するんだよ…、と呆然としてしまうけれども、
公式があるようです。時間がないので公式を使います!
階乗が2つ並んでいるのは1つ飛ばしで階乗をする2重階乗というらしい。
\begin{eqnarray}
\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} sin^n x dx &=& \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} sin^{n-1}x sin x dx \\
&=& \frac{\pi}{2} \frac{(n-1)!!}{n!!}
\end{eqnarray}
ちなみに\(cos^n x\)の積分は\(sin^n x\)の積分から導かれて以下のようになる。
\begin{eqnarray}
\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} sin^n x dx = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} cos^n x dx = \begin{cases}
\frac{(n-1)!!}{n!!} & nが奇数 \\
\frac{\pi}{2} \frac{(n-1)!!}{n!!} & nが偶数
\end{cases}
\end{eqnarray}
体積の話に戻ると、
\begin{eqnarray}
V_n = \begin{cases}
2V_{n-1}\frac{(n-1) (n-3) (n-5) \cdots 2}{n (n-2) \cdots 3} & nが奇数 \\
\pi V_{n-1} \frac{(n-1)(n-3)(n-5)\cdots 3}{n (n-2) (n-4) \cdots 2} & nが偶数
\end{cases}
\end{eqnarray}
偶数のときと奇数のときで別になってしまっているのを1つにしたい。
偶数のとき\(n=2k\)、奇数のとき\(n=2k-1\)とおいて、それが等しいとする。
\begin{eqnarray}
V_{2k-1} &=& 2V_{2k-2} \frac{(2k-2)(2k-4)(2k-6)\cdots 2}{(2k-1) (2k-3) \cdots 3 } \\
V_{2k} &=& \pi V_{2k-1} \frac{(2k-1)(2k-3)(2k-5)\cdots 2}{2k (2k-2)(2k-4) \cdots 2}
\end{eqnarray}
2つの式で\(V_{2k-1}\)が現れるので、それで等式を立てる。
\begin{eqnarray}
2V_{2k-2} \frac{(2k-2)(2k-4)(2k-6)\cdots 2}{(2k-1) (2k-3) \cdots 3 } = \frac{V_{2k}}{\pi} \frac{2k (2k-2)(2k-4) \cdots 2}{(2k-1)(2k-3)(2k-5)\cdots 2}
\end{eqnarray}
ガンガン約分する。
\begin{eqnarray}
V_{2k} = 2\pi V_{2k-2} \frac{1}{2k} = \frac{\pi V_{2k-2}}{k}
\end{eqnarray}
\(V_{2k}\)と\(V_{2k-2}\)の漸化式になっていて、\(V_{2k-2}\)が\(V_2\)になるまで再帰的に計算する。
\begin{eqnarray}
V_{2k} = \frac{\pi^{k-1}}{k!} V_2 = \frac{\pi^k }{k!}
\end{eqnarray}
階乗の一般化(ガンマ関数,\(n! = \Gamma{(n+1)}\))を使って書くと、
\begin{eqnarray}
V_n = \frac{\pi^{\frac{n}{2}}}{\Gamma{(\frac{\pi}{2}+1)}}
\end{eqnarray}
\(n\)次の超球面の体積が出ました…。
次回、これを使って超高次元でメロンパンの皮が厚いのを示します..。